チュチェ思想研究

チュチェ思想国際研究所

次世代の幸福と平和を保障するために
―アジア・チュチェ思想研究所理事長夫妻を迎えて
沖縄、東京で開催されたチュチェ思想研究集会―

コロナ禍でおよそ2年半、世界のチュチェ思想研究者のあいだで直接的な交流が閉ざされていた状況のなかで、各国において新型コロナウイルス感染症にたいする防疫措置が緩和されたことを契機に、昨年10月頃から交流の動きが活発化しました。

日本では、チュチェ思想国際研究所副理事長であり、アジア・チュチェ思想研究所理事長であるハリシュ・チャンダー・グプタ教授、元デリー大学女子大学院校長であるサドナ・ハリシュ博士を迎え、2023年1月8日、沖縄でチュチェ思想研究全国セミナーが、1月10日、東京でチュチェ思想国際研究所定例研究会が開催されました。

両博士の日本訪問は、コロナ禍で世界のチュチェ思想研究者間の直接的な交流を控えざるを得なかった状況に、風穴を開けるものとなりました。

沖縄では、金正恩総書記が新しい世代の指導者として公の場に登場したことを契機に、2011年から毎年1月初旬に、チュチェ思想全国セミナーを開催してきました。今年は、1月8日に、全国セミナーが開催される計画が国内レベルで進行していたなか、ハリシュ・チャンダー・グプタ教授、サドナ・ハリシュ博士に訪日を相談し、講演を依頼したところ、両博士は快諾されました。

すべての準備が整い、両博士の訪問のみが待たれるという状況になった昨年末、両博士は、インドで接した日本のコロナ禍が深刻であるという情報に懸念をいだかざるをえませんでした。両博士は、率直にそのような情報が流されていることを招請者に伝え相談するなかで、疑念が払拭され、訪日にいたりました。

両博士は、日本滞在中、さまざまな機会に、もし率直にメールを送って相談せず、訪日を諦めていたら、このような貴重な経験を得る機会を逃してしまっていただろうと、心情を吐露していました。

一方、コロナ禍の様々な情報が飛び交う状況下であっても、強い思いをもって訪日された両博士にたいして、日本のチュチェ思想研究者は、深い感謝と敬意をいだき、両博士の日本滞在がよりよいものとなるよう、だれもが心をつくしました。

チュチェ思想研究全国セミナーが沖縄で開催される

2023年1月8日、チュチェ思想国際研究所が後援し、金日成・金正日主義研究全国連絡会と沖縄チュチェ思想研究連絡会の共催でおこなわれたチュチェ思想研究全国セミナーには、チュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長、アジア・チュチェ思想研究所理事である家正治神戸市外国語大学名誉教授をはじめ、北海道から沖縄まで全国各地からチュチェ思想研究者や学者、民主人士、アフリカやアジアの在日外国人など多様な階層の人々130余名が参加しました。

最初に、主催者を代表し、家正治教授が挨拶しました。

日本政府が敵基地攻撃能力を備え、防衛費を引き上げるといって戦争政策をおしすすめるなかで、日本は原点に戻り、軍国主義を排し、民主主義を実現させ、絶対的平和主義を守っていかなくてはならない、チュチェ思想を骨肉化していくなかで新しい時代をきずいていくことができるし、日本の自主化、民主化をすすめ、国際社会での自主化、民主化を実現するために国際法を遵守することが重要である、皆さんとスクラムを組んで前進していきたいと述べました。

全国セミナーでは、朝鮮社会科学者協会や参議院議員高良鉄美氏より寄せられたメッセージが紹介されました。

高良鉄美氏は、メッセージのなかで、「沖縄を二度と戦場にはしない」ためにも、本全国セミナーが実りあるものとなり、盛会となりますことを祈念すると、表明しました。

在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会副議長の徐忠彦氏より来賓挨拶がおこなわれ、朝鮮労働党第7回大会や第8回大会を契機として、金正恩総書記の指導がより実を結ぶようになった朝鮮の社会主義建設について言及しながら、朝鮮はこんにち世界屈指の戦略国家へと様変わりし、世界政治を主導できる核大国として登場するようになったと述べました。

セミナーでは、ハリシュ・チャンダー・グプタ教授が「現代世界で拡大する紛争と自主、正義、世界平和のためのチュチェ思想」と題して講演をおこない、次のように述べました。

世界はいま、人類史上、きわめて不確実で不安定、危険な段階を迎えています。戦争の暗雲が世界のすべての国々に垂れこめており、世界平和が著しく脅かされています。世界は帝国主義国とその追随国、反帝国主義国に二分しており、帝国主義国は自主独立国家を支配し従属させるために世界中で戦争をくりひろげ、米国はロシアの弱体化をねらって、ウクライナ戦争をひき起こしました。世界のすべての紛争の根源に、覇権を追求し、資源を略奪し、脆弱な独立国家に彼らの政治システムを押しつけようとする米国とその同盟国があるということは、よく知られていることです。

沖縄戦南部戦跡地を訪ねて

チュチェ思想の重要な内容は、自力更生によって実現される自主性です。各国は、他国に依存せず、あらゆる分野において自力更生するときにのみ、自主性を実現することができます。世界のすべての国が、自主性を堅持し独立するために、自力更生が不可欠であると提唱するチュチェ思想が示す道へ進むようにしなければなりません。世界のすべての国が自力更生するなら世界平和はただちに実現されるでしょう。

金日成・金正日主義研究沖縄連絡会代表である平良研一沖縄大学名誉教授が「戦争へ向かう沖縄の基地政策―チュチェ思想にもとづく自主・自立の反戦平和を―」と題して講演して、次のように述べました。 

沖縄は、アジア・太平洋戦争において、最終の日米戦が激しくおこなわれ悲惨をきわめた地です。戦後も、日本の米軍基地の70%が沖縄に集中し、戦闘機の爆音に悩まされ、オスプレイの窓枠が落下したりして沖縄県民が犠牲になる、米軍による事件が日常的におこっているのです。

ウクライナ戦争が起こって、日本政府は、急速に防衛、戦争準備に力をいれるようになり、朝鮮のミサイル実験などを利用して軍備増強にやっきになっています。

チュチェ思想は、歴史と社会の主人公として人間をつねに大事にする思想であり、朝鮮の社会主義は、人間中心の社会主義です。

平良教授は、日本政府の危険な戦争準備について指摘し、朝鮮は、凶悪な帝国主義から人民を守る自衛のために、核保有やミサイル実験をしていると述べ、人間は集団のなかでこそ輝くのであり、朝鮮は美しい団結をつくり、個人と集団が結びついていると結びました。

セミナーでは、金正恩総書記に送る手紙が採択されました。

最後にチュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長が閉会の挨拶をおこないました。

尾上事務局長は、最初に、インドから参加したハリシュ・チャンダー・グプタ教授、サドナ・ハリシュ博士をはじめ、積極的に参加し立派な講演をされた諸人士に謝意を表しました。

そして、最近の日本の状況と朝鮮について次のように述べました。

金正恩総書記は、昨年12月27日、朝鮮少年団第9回大会参加者に「少年団の旗を高く掲げ強国の未来をめざして進もう」と題する書簡を送りました。

朝鮮では革命の初期にセナル少年団が創立されてから100年、解放後に朝鮮少年団が創立されて70余年が経ちます。

金正恩総書記は書簡のなかで、“革命をすすめる党にとってもっとも大きなことは、次世代が50年も、500年も他人に頭を下げずに堂々と生きていく尊厳ある強大な国を建設することです。社会主義をしっかりと固守しているのも、次世代に明るい笑顔と何羨むことのない幸せを与え、子々孫々幸福を享受する強国を譲り渡すためです”と述べています。次世代の幸せを党の第一の事業としておし進める金正恩総書記のような指導者は他にみることはできません。

朝鮮の核兵器は今を守るためだけではなく、将来の繁栄のために、とりわけ次世代の子どもたちの幸せのためにあるのです。朝鮮では子どもたちが輝き、未来が輝いています。

朝鮮が子供たちに幸せな未来を保障している一方で、日本政府は次世代の将来を暗くし大きな犠牲を強いる政策をおし進めています。いまウクライナでは人口の40%をこえる人々が国内外避難民となっています。ウクライナの人々を殺し国土を破壊したのは武器であり、最大の武器支援国は米国です。米国は国民の血税を使って武器を買い上げ軍需産業に膨大な利益をもたらしています。米国に従属する日本政府は12月17日、安保関連3文書を発表し、実現するための費用として5年間で43兆円を計上しました。政府は先制基地攻撃をはじめとする軍拡の財源を赤字国債にもとめており、10年後、20年後に大人になるこども世代に莫大な額の借金を課しています。

子どもたちを愛し信頼する政治、次世代の未来を明るくする政治を領導する金正恩総書記に学ぶことは大きな意義があります。

尾上事務局長は今回のセミナーがチュチェ思想の正当性、将来性を示すものとなったと閉会の言葉を締めくくりました。

平和への決意を歌と踊りに託し「新春 芸術公演」

セミナー終了後、新春芸術公演がおこなわれ、喜納昌吉&吟呼、遠山洋子氏、鼓衆若太陽が出演しました。

平和活動家でありアーティストである喜納昌吉氏は、世界平和のために、沖縄が米国の前線基地にならず、朝鮮半島の統一をなしとげるために自身も力をつくすと語り、熱唱しました。最後に会場からのアンコールに応え、「ハイサイおじさん」を歌うと会場の参加者が飛び入りで壇上に上がり踊りだし、笑いと拍手の渦に包まれました。

日朝音楽芸術交流会副会長の遠山洋子氏は、自身が歌手としてデビューした当時のことを感慨深く披瀝しました。日本の芸能界では、芸能人が表立って訪朝したり、朝鮮の歌を歌うことはバッシングの対象となっている、そんななかデビュー前に訪朝し、今後デビューし歌手として芸能活動をやっていけるかどうかの岐路にたたされたが、当時、黙認することで、自身が歌手と朝鮮との友好活動を両立させることを可能にしてくれた恩師の作曲家がいたと述べ、その恩師の作曲による、演歌の楽曲を披露しました。

遠山洋子氏はまた、ステージを降りて、観客に近づきながら、他の楽曲を披露しました。

その後再びステージに戻り、金正恩総書記への思いを込めて朝鮮でつくられた歌を歌いました。

最後に、太鼓をたたきながら踊る沖縄の若者のグループ「鼓衆若太陽」がエイサーを披露しました。

「鼓衆若太陽」は、浦添の城跡から見渡すと眼下に米軍基地が見える、沖縄から米軍基地をなくして、平和な日本にしたい、世界を平和にしたいという思いをのせて、明るく元気に力強く、エイサーを踊りました。

チュチェ思想国際研究所定例研究会が東京で開催される

2023年1月10日、チュチェ思想国際研究所主催の定例研究会が東京で開催されました。

定例研究会には、チュチェ思想国際研究所事務局長の尾上健一氏、チュチェ思想国際研究所理事である韓東成朝鮮大学校学長、金日成・金正日主義研究東海連絡会代表世話人の鈴木敏和氏、朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会の水谷研次事務局長など多様な人士、約50名が参加しました。

定例研究会では、ハリシュ・チャンダー・グプタ・アジア・チュチェ思想研究所理事長、サドナ・ハリシュ元デリー大学女子大学院校長、チュチェ思想国際研究所理事であり埼玉大学名誉教授である鎌倉孝夫氏、在日本朝鮮社会科学者協会の李英洙会長が講演をおこないました。

最初に、鎌倉教授が「ウクライナ情勢をどうとらえるか―自主・平和確立のために」と題して講演をおこない、次のように述べました。

ウクライナ戦争は、米国がロシアを弱体化させるために起こした戦争であり、ロシアに対する経済制裁によって、米国の商社や多国籍企業が潤っています。わたしたちは、各国との関係で相互尊重し連帯関係を確立している朝鮮の模範に学ばなければなりません。

続いてサドナ・ハリシュ博士が、「自力更生、国家の繁栄、自主と世界平和」と題して講演し、次のように述べました。

わたしたちは、いわゆる超大国によってつくりだされた内外の危機、不安と恐怖、経済的、社会的、政治的不安定、民族や国家間の戦争と増悪という、他の時代とは異なる複雑な状況下である、21世紀最初の四半期に生きています。現在、世界では多くの戦争、紛争が起こっており、例えば、ミャンマーに投入された軍事費は、世界の食糧危機を42回も解消できるものになっています。

自力更生は自主であり、自力更生にもとづく自主は、世界平和を実現する万能の鍵です。チュチェ思想は、自力更生の重要性を提唱し人間の尊厳、国家とその自主性を重視しており、世界平和にはチュチェ思想が必要です。

ひきつづき、ハリシュ・チャンダー・グプタ教授が「チュチェ朝鮮における社会主義教育の重要性」と題して講演し、次のように述べました。

1945年8月15日に朝鮮が解放された時、学齢期の子どもたちのほとんどが学校教育を受けられずにいました。解放後ただちに、朝鮮の党と政府が優先的におこなったことは、国の教育制度を発展させることです。全児童を対象にした無料教育をおこなうために、初等、中等学校が建設されただけではなく、大学など、高等教育をおこなう機関を建設する措置が講じられたのです。

朝鮮における社会主義教育は、すべてが、社会主義朝鮮の建国者、金日成主席によって創始されたチュチェ思想で徹底して導かれているのです。

最後に、李英洙会長が「金正恩総書記が描く朝鮮と世界の未来図」と題して講演し、次のように述べました。

金正恩総書記は、朝鮮の未来図として、社会主義強盛国家の特徴を「一心団結と不敗の軍事力に新世紀産業革命をプラスすれば、それが即ち社会主義強盛国家です」と明らかにしました。世界の未来図として支配と従属、侵略と干渉がない世界、すべての国と民族の自主権と平等が保障された世界であると自主化された世界を規定しました。

そして、金正恩総書記の描く未来図について述べました。

最後に、鈴木敏和氏が閉会の挨拶をおこないました。

「新春 文化・交流の夕べ」

定例研究会終了後、「新春 文化・交流の夕べ」がおこなわれました。

夕べには、日朝音楽芸術交流会会長の池辺幸惠氏、アイヌ伝統工芸家の成田得平氏、東京朝鮮歌舞団が出演しました。

広島出身の池辺幸恵氏は、二度と世界で原爆がつかわれない平和な社会をきずくことに寄与したいという思いを込め、日本の人々のあいだで長く親しまれてきた曲をピアノで演奏しました。

成田得平氏は、アイヌ語であいさつをおこなったあと、アイヌ民族の信仰や生活を反映し、古来より変わらず継承されてきた伝統舞踊の「エムシ・リムセ(剣の舞)」を披露しました。

東京朝鮮歌舞団は、朝鮮の名曲の数々と伝統舞踊のチャンゴの舞などを披露し、朝鮮民族の情緒と誇りを伝えてくれました。

朝鮮大学校を訪問して交流

ハリシュ・チャンダー・グプタ教授とサドナ・ハリシュ博士は、日本滞在中、朝鮮大学校を訪問し、韓東成学長や学部の教授たちと歓談しました。

朝鮮大学校の教授による、朝鮮大学校の創立経緯や民族教育について、また、学生にどのようにチュチェ思想教育をおこなっているかについての解説を聞きながら、両博士は、朝鮮と日本のあいだに国交が樹立されていない環境のもとで、朝鮮大学校の教授陣営が、朝鮮民主主義人民共和国の国籍をもちながら、新しい世代にたいする教育をおこなっていることに敬意と賛同を表しました。

歓談後は、校内にある博物館を訪問し、両博士は、金日成主席や金正日総書記、そして金正恩総書記が在日朝鮮人の子弟にどれだけの関心と配慮を払ってきたかについて、思いを新たにしました。

互いに深い印象を与えあって

1月8日、沖縄でチュチェ思想研究全国セミナーが開催されたあとで、関係者のあいだでもたれた懇親会の席で、ハリシュ・チャンダー・グプタ教授、サドナ・ハリシュはともに、コロナ禍を乗り越えて日本を訪問することができた喜びについて語りながら、なによりも、金正恩総書記の健康と長寿を願って、乾杯を提案しました。

また、1月10日、東京におけるチュチェ思想国際研究所定例研究会のあとで催された「新春 文化・交流の夕べ」において、セミナーや定例研究会における講演者はいうまでもなく、参加者が「自主性」にたいする強い思いをもって参加していたことや、チュチェ思想を日常的に学びながら、家族にも良い影響を与え、家族ぐるみで活動している姿に感銘を受けたと述べました。

2023年初頭に、ハリシュ・チャンダー・グプタ・アジア・チュチェ思想研究所理事長、サドナ・ハリシュ博士を迎えて開催されたチュチェ思想研究全国セミナー、チュチェ思想国際研究所定例研究会は、新たな年を迎え、世界が自主平和の方向に進むために、チュチェ思想をより深く研究し普及する活動を、互いに協力しあいながら力強くすすめていくことを誓いあう場になりました。